プノンペンの虐殺博物館
来館者が激減

カンボジア通信 No.20/59
  2020年8月31日版 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、プノンペンのほとんどの博物館への来館者が激減した。なかでも、首都プノンペンにあるポル・ポト時代の2つの史跡は、世界的に著名な博物館だが、現在の来訪者数は、前年同期比で最大95%もの減少となっている。

 クメールタイムズ紙によると、トゥールスレン虐殺博物館のハン・ニサイ館長は、「新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、来館者の大幅な減少が始まった」という。ただ、観光客が減ったことだけが理由ではないという。「私たちの博物館には、全国の学校から生徒たちが来て勉強をするプログラムを実施していたが、学校が休校になって生徒たちも来なくなってしまった」と、話す。

 「キリング・フィールド」と呼ばれるチュンエック虐殺博物館も、来訪者が激減した。新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前は、毎週約3000人の来訪者がいたが、現在ではその10分の1に減ってしまったという。

 どちらもカンボジア教育省の傘下にあり、職員たちの雇用は現在のところ保証されており、博物館は閉鎖にはならない。しかし、大幅な収入減で今後の運営に影響が出ることは必至だ。また、博物館の機能が低下すれば、カンボジアの現代史を若い世代に伝える役割にも支障が出る。経済だけでなく、新型コロナウイルスの影響は、社会の文化的な側面にも深刻な打撃を与えている。

 トゥールスレン虐殺博物館は、1975年から1979年のポル・ポト政権下で、「政治犯」とされた人々の強制収容所だった建物をそのまま資料館として残した。もともとは高校の校舎で、拘束されていた部屋や鉄製のベッド、拷問に使用された道具や拘束された人々の写真などが展示されている。ここで拘束され、拷問を受けて「自白」をさせられた12,000人以上が、処刑場であった「キリング・フィールド」、チュンエックに連行されて殺害された。ポル・ポト時代の収容所やキリング・フィールドの跡地はカンボジア全土にあるが、首都にあり、比較的多くの資料が残されていることから、トゥールスレンおよびチュンエック虐殺博物館は、世界中から観光客が訪れる場所として知られている。







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